今日行われた女子マラソンのアテネ五輪出場代表選手選考会で、野口みずき選手(グローバリー)、坂本直子選手(天満屋)、土佐礼子選手(三井住友海上)の3名が代表に選ばれた。野口選手は昨年のパリ世界陸上で銀メダル、坂本選手は今年の大阪国際女子マラソンで優勝、そして土佐選手は昨日の名古屋国際女子マラソンで逆転優勝を果たした。注目の高橋尚子選手(スカイネットアジア航空)は、昨年の東京国際女子マラソンで失敗したのが響き、選に漏れた。
今回の選考は、昨年の世界選手権と国内3レース(東京、大阪、名古屋)の計4レースが代表選考会に指定されており、(1)世界選手権でメダルを獲得した中で日本人最上位(2)それ以外は選考レースの上位者の中で五輪でメダル獲得もしくは入賞が期待できる――の基準で選考が行われたという。野口選手は(1)を満たしたため早々に内定を決めていたが、(2)の基準を満たす選手をどのように決めるかが今回の焦点となった。
坂本選手は、大阪でぶっちぎりの独走で文句なしの優勝していた。残る一人は、名古屋で優勝するか、優勝者がなければ高橋尚子選手が最有力候補と目されていた。高橋選手は昨年の東京で後半失速して2位に終わっており、名古屋で再挑戦するかどうかが注目されていたが、名古屋大会はアテネ本番に日程的に近く、名古屋に出場して仮に優勝し代表に選ばれたとしても、本番への調整が難しくなることが懸念されるということで、名古屋への出場を見送った。名古屋に出場する選手はあまり知名度の高くない選手ばかりで、さほど好記録が出ることもないだろうという計算も働いたのかもしれない。しかし、ふたを開けてみると、土佐選手が選考4レース中最高記録で優勝する結果となった。
選考では、野口選手、土佐選手が早々に決まり、坂本選手と高橋選手のどちらにするかで接戦だったという。坂本選手は確かに大阪で独走優勝だったが、タイムは4レース中最も遅かった。むろん、大阪大会のときは雪まじりで気温が極端に低く、コースコンディションが最悪だったという悪条件のためではあったが、まだ若くてマラソン出場回数も少なく経験も浅い彼女が果たしてオリンピックという大舞台に立って大丈夫なのか、実績のある高橋選手のほうがふさわしいのではないか、という意見もあった。しかし、最終的には、選考レースの結果を重視し、坂本選手のほうを選んだとのことである。
選考方法としては、一番すっきりして、順当なやり方だったのではないだろうか。落選した高橋選手は不運だったであろうが、名古屋に出場してすっきり優勝していれば文句なしに選ばれていたものを、あえてそれを選択せず、運を天に任せたのであるから、その賭けが外れたのは本人の選択の結果であり、彼女自身も納得しているに違いない。
実は、坂本選手は、僕と同じ高校の出身なのである。もちろん僕よりずっとあとになってから入学してきたので、直接顔を合わせたことがあるわけではないのだが、同じ高校の卒業生ということで、親近感がわいていた。だからというわけではないが、坂本選手については、これまでのレースをずっと見てきており、今年の大阪はぜひとも大活躍してくれることを期待していた。その期待に応え、今回、代表に選出されたことは、先輩としてとても嬉しく、同郷の人間として非常に誇らしい。おめでとう、後輩よ。アテネでも活躍を祈っている。